💊ステロイド薬とは
ステロイドとは、副腎から作られる副腎皮質ホルモンの1つです。ステロイドの持つ強力な抗炎症作用、抗浮腫(むくれ)作用、細胞機能修復作用などにより、さまざまな病気の治療に使われています。しかし、副作用が多く、飲み方も特殊なので注意が必要です。耳鼻咽喉科では突発性難聴や顔面神経麻痺、咽頭浮腫(のどの腫れ)、外耳炎、嗅覚障害などの治療に使われています。
💊当院でのステロイド薬の投与方法
①経口ステロイド漸減療法
突発性難聴や顔面神経麻痺の際の投与方法です。プレドニゾロンというステロイド薬を初回1日量50~60mgから10~14日かけて徐々に減量していきます。
②経静脈ステロイド療法
咽頭浮腫の際の投与方法です。ヒドロコルチゾンコハク酸エステルナトリウムというステロイド薬を1回100~200mgを2~3日間だけ短期で点滴します。
③外用ステロイド療法
外耳炎の際は点耳薬を耳内に点耳したり、軟膏を患部に塗ります。また、嗅覚障害の際は点鼻薬を鼻内に投与します。
💊ステロイド薬投与中の注意点
ステロイドホルモンは少量、体内で分泌されていますが、ステロイド薬を大量に長期内服すると、体内で分泌されなくなります。そのため、急に薬を飲まなくなると、体の中のステロイドホルモンが不足し、体のだるさや吐き気、頭痛、血圧低下などの症状が見られることがあります(ステロイド離脱症候群)。自己判断で急に内服を中止しないようにしてください。
💊ステロイド薬の副作用
ステロイド薬の副作用を示します。これらの症状は全て現れるわけではなく、投与量や投与期間、 投与方法によっても異なります。
①感染しやすくなる
免疫力が低下するので、かぜをひきやすくなります。また、もともとB型肝炎やC型肝炎などの感染症にかかられている方は、感染症が悪化する可能性があります。感染症にかかられている方は、内科と連携して治療をする必要があります。
②消化性潰瘍
胃や十二指腸の粘膜が弱って、潰瘍ができることがありますので、ステロイドを大量に内服する際は、胃薬を併用していただきます。
③血糖値が上がる
糖を合成して、血糖値があがります。糖尿病にかかられている方は、内科と連携して治療をする必要があります。
④血圧が上がる
体内に塩分がたまりやすくなり、血圧があがったり、むくみが生じます。高血圧にかかられている方は、内科と連携して治療をする必要があります。
⑤満月様顔貌、肥満
食欲が高まり、顔がむくれたり、体重が増え肥満になることがあります。食事量やカロリーには注意しましょう。
⑥にきび
にきびができやすくなります。ステロイド薬の減量・休薬により改善します。
⑦白内障、緑内障
白内障が進行したり、眼圧が上昇して緑内障が悪化することがあります。白内障や緑内障にかかられている方は、眼科と連携して治療をする必要があります。
⑧精神症状
不眠症、うつ病などになることがあります。ステロイド薬の減量・休薬により改善します。
⑨その他
骨がもろくなる、骨折、血栓症、増毛、脱毛、生理不順、不整脈、ステロイド筋症などがみられることがあります。ステロイド薬の減量・休薬により改善します。
執筆・監修医師紹介
院長/医学博士
楓みみはなのどクリニック 院長 中下 陽介
経歴
- 関西医科大学 医学部医学科 卒業
- 広島大学大学院 医歯薬学総合研究科 卒業
- 広島大学関連病院勤務
- 木沢記念病院 耳鼻咽喉科 副部長
- 岐阜大学医学部付属病院 耳鼻咽喉科・頭頸部外科 助教(臨床講師)
- 中濃厚生病院 頭頸部・耳鼻咽喉科 部長
- 楓みみはなのどクリニック 院長
認定・資格
- 日本専門医機構認定耳鼻咽喉科専門医
- 日本耳鼻咽喉科学会認定補聴器相談医
- 日本耳鼻咽喉科学会認定騒音性難聴担当医
- 日本めまい平衡医学会認定めまい相談医
- 日本医師会認定健康スポーツ医
- 博士(医学)広島大学
- 補聴器適合判定医師