概要

クビにはさまざまな器官、臓器があります。表面は皮膚、皮下組織、皮下脂肪、筋肉、骨、軟骨などがあり、その深部には甲状腺やリンパ節、唾液腺(耳下腺、顎下腺、舌下腺)がありますし、頸動脈や頸静脈などの太い血管や脳神経の一部(迷走神経、副神経、舌下神経など)が走行しております。したがって、クビにできものができたといってもできた部位、大きさ、さわった感じ、痛みを伴うかなどによってさまざまな原因があります。耳鼻咽喉科の病気が原因になっていることが大半です。クビにできものができた場合は、早めに耳鼻咽喉科を受診することをお勧めします。

原因

頸部リンパ節腫脹

クビのできものの中でも、よくみられる病気です。のどの風邪や急性扁桃炎などに伴って、のどの周りのクビのリンパ節が腫れることがあります。悪化すると膿がたまる膿瘍となって広がることもあります。また、頸部リンパ節炎や悪性腫瘍(口腔がん、舌がん、咽頭がん、喉頭がん、甲状腺がんなど)の頸部リンパ節転移やリンパのがん(悪性リンパ腫)などでクビのリンパ節が腫れることがあります。

甲状腺腫瘍

クビの前にある、のどぼとけのすぐ下に蝶の形をした甲状腺があります。気管の表面を取り囲んでおり、普通はさわってもわかりません。甲状腺は生命活動維持や体内のカルシウム調節に必要なホルモンを分泌する臓器です。甲状腺腫瘍には良性腫瘍と悪性腫瘍があり、腫れだけの症状のことが多く、首の前に比較的かたいしこりとして触れることができます。悪性腫瘍ですと周りの組織を破壊して、声帯を動かす神経が麻痺して声がかすれたり、腫れた部分が痛くなることもあります。

唾液腺腫瘍

耳の下や顎の下が腫れると、耳下腺腫瘍や顎下腺腫瘍の可能性があります。それぞれに良性腫瘍と悪性腫瘍があり、良性腫瘍は腫れだけの症状のことが多いですが、悪性腫瘍ですと周りの組織を破壊して、顔面神経が麻痺したり、腫れた部分が痛くなることもあります。また、唾液腺には耳下腺、顎下腺以外に、舌下腺や口の中などにある小さい唾液腺もあり、良性や悪性の腫瘍ができることがあります。

先天性のう胞

胎児のときにクビの中にある管が生後も消えずに残ったものが腫れることがあります。それが腫れると、内部に液体がたまった袋状のできものができ、これをのう胞と言います。クビにできるのう胞は側頸のう胞正中頸のう胞、リンパ管腫、皮様のう腫などさまざまな種類ののう胞ができます。症状は首の腫れだけの症状のことが多く、炎症を起こすと痛みや周りの組織とくっついてかたくなったりします。

血管や神経の腫瘍

頸動脈が2つに分かれる部分に生じる頸動脈小体腫瘍、クビの中を走行する迷走神経や横隔神経などから生じる神経鞘腫、細い血管が腫れた血管腫などがあります。いずれもあまり見られることはありませんが、クビにできものができたが診断が難しい場合、これらの可能性があります。