上咽頭とは?

上咽頭は鼻から入ってきた細菌やウイルス、異物などの侵入を防ぐ免疫組織が存在しております。正常な状態でも免疫細胞(リンパ球)が多く存在し、「生理的炎症部位」と呼ばれ、常に外敵に対する免疫反応を行っております。また、脳からのリンパ管や脳神経(舌咽神経、迷走神経、交感神経など)の通り道となっており、脳から全身へのリンパ流や神経情報伝達の中継地点としての役割を果たしているといわれています。従って、上咽頭は単なる空気の通り道ではなく、神経系・免疫系・内分泌系に影響を及ぼす、いわば全身の「健康の土台」を担う重要部位といわれています。

慢性上咽頭炎とは?

さまざまな原因により起きた急性炎症の状態が落ちついても、上咽頭の免疫反応が高ぶる状態が残り、さまざまな症状を引き起こすことがあり、これを慢性上咽頭炎といいます。急性炎症のときは感染に伴い、単球や好中球が増えますが、慢性炎症のときは正常のときと同様にリンパ球が多く存在しています。したがって、正常な上咽頭より過剰な免疫反応が行われているため、症状はのどの症状だけでなく、全身のさまざまな症状も引き起こすといわれております。

原因

次のようにさまざまな原因があります。

  • 細菌やウィルスなどの感染
  • ダニやほこり、カビなどによるアレルギー性鼻炎、花粉症など
  • 疲労(つかれ)、ストレスなど
  • 気温や湿度の急激な変化など

症状

慢性上咽頭炎そのものによる症状以外にも、神経系・免疫系・内分泌系に関連したさまざまな症状が起きるといわれています。

  • 慢性上咽頭炎そのものによる症状
  • 自律神経障害を中心とした神経・内分泌系障害に伴う症状
  • 自己免疫機序を介した疾患・症状

当院での治療

EAT(イート;上咽頭擦過療法、Bスポット療法

塩化亜鉛というお薬を上咽頭に塗る治療です。塩化亜鉛による直接的な消炎効果や上咽頭を擦過(こする)する刺激によって血流を改善させ脳からの老廃物を排除したり、副交感神経(自律神経の1つ)を刺激することによる間接的な消炎効果が期待できるといわれています。以前はB療法と呼ばれていましたが、最近はEAT(イート;上咽頭擦過療法)とも呼ばれています。治療は通常、週に1~2回で、合計で10~15回程度を目安に行います。

*具体的な方法

①鼻の中に麻酔液の入ったお薬を噴霧します。

②塩化亜鉛が付いた綿棒で上咽頭を擦過します。この際、痛みや出血を伴うことが多いです。

*注意点

・内視鏡カメラを用いないので、上咽頭全体を完全に擦過することはできません

・一般的には鼻とのどの両方から実施する処置ですが、のどからの処置はかなり苦しいため、当院では基本的に鼻からのみ実施しております。のどからの処置もご希望の場合は、医師にご相談ください。

・特に治療を開始した頃は痛みや出血を多く認めますが、回数を重ねる毎に効果が現れ、痛みや出血は減っていくことが多いです。したがって、根気強く通院していただくことが必要となります。

*EAT実施の流れ

・初診時は、まずEAT(Bスポット療法)の適応があるかを内視鏡で検査を行います。したがって、初診時にいきなりEATを開始することは行っておりません。検査でしっかりと適応を判断し、十分に説明し同意をいただいた上で行っております。予めご了承ください。

・EATは通常の診療で行っております。Web予約システムで予約をお取りになり、ご自身の取られた番号の10番前にはご来院ください。診療は保険診療で行っております。

対症療法

消炎剤、粘液調整薬、解熱鎮痛剤などの内服を行います。

吸入治療

のどの炎症を抑える効果があります。吸入治療は週に2~3回程度行うと効果が高いので、吸入治療を行うための通院も可能です。

日常生活の注意点

普段からのうがいが大切です。うがいはのどだけでなく、鼻うがいも行って下さい。上咽頭は鼻の奥にありますので、のどうがいだけでは効果が不十分になります。のどの乾燥により上咽頭炎は引き起こしやすくなるので、夏はクーラーを下げ過ぎないように、冬は加湿器を使用して、湿度を50~60%程度に保つようにしましょう。喫煙は治療の妨げになるので、禁煙しましょう。

 

 

 

 

 

 

執筆・監修医師紹介

医師 中下陽介

院長/医学博士
楓みみはなのどクリニック 院長 中下 陽介

経歴

    • 関西医科大学 医学部医学科 卒業
    • 広島大学大学院 医歯薬学総合研究科 卒業
    • 広島大学関連病院勤務
    • 木沢記念病院 耳鼻咽喉科 副部長
    • 岐阜大学医学部付属病院 耳鼻咽喉科・頭頸部外科 助教(臨床講師)
    • 中濃厚生病院 頭頸部・耳鼻咽喉科 部長
    • 楓みみはなのどクリニック 院長

認定・資格

    • 日本専門医機構認定耳鼻咽喉科専門医
    • 日本耳鼻咽喉科学会認定補聴器相談医
    • 日本耳鼻咽喉科学会認定騒音性難聴担当医
    • 日本めまい平衡医学会認定めまい相談医
    • 日本医師会認定健康スポーツ医
    • 博士(医学)広島大学
    • 補聴器適合判定医師

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