声がかすれる・声が弱くなった|声帯萎縮症の症状・検査・治療
声がかすれる・声が弱くなった|声帯萎縮症の症状・検査・治療
「以前より声がかすれるようになった」
「声が弱くなり、相手に聞き返される」
「長く話していると声が続かない」
年齢とともに、このような声の変化を感じることがあります。
原因の一つが声帯萎縮症(せいたいいしゅくしょう)です。
声帯がやせて薄くなることで、声を出すときに左右の声帯が十分に閉じにくくなり、隙間から空気が漏れて、かすれた弱い声になることがあります。加齢性声帯萎縮では声帯の粘膜や筋肉などが萎縮することが知られています。

声帯とは?
声帯は、のどの奥にある喉頭(こうとう)の中に左右一対あります。
呼吸しているときには左右の声帯が開き、空気が通ります。
声を出すときには左右の声帯が近づき、肺から送り出された空気によって声帯が振動することで、声のもととなる音が生まれます。
その音がのどや口の中で響き、私たちの「声」になります。
したがって、声帯がうまく閉じられなくなると、空気が漏れて声が弱くなったり、かすれたりします。

声帯萎縮症とは?
声帯萎縮とは、声帯を構成している組織のボリュームが減少した状態です。
原因はいくつかありますが、中高年以降では加齢に伴う声帯萎縮が代表的です。
加齢性声帯萎縮では、声帯の粘膜や筋肉などに変化が生じ、声帯が以前より薄くなったり、弓状にくぼんだ形になったりします。
その結果、声を出そうとして左右の声帯を近づけても、中央に隙間が残ることがあります。
これを声門閉鎖不全といいます。
隙間から息が漏れるため、
「息が漏れるような、弱くかすれた声」
になりやすくなります。

声帯萎縮症ではどんな症状が出るの?
代表的なのは声のかすれ(嗄声)です。
次のような症状がみられることがあります。
- 声がかすれる
- 息が漏れるような声になる
- 声が弱く、小さくなる
- 大きな声を出しにくい
- 長く話すと疲れる
- 話している途中で息が続かなくなる
- 相手から聞き返されることが増える
- 以前より声を出すのに力が必要と感じる
「年齢のせいだから仕方がない」と考えてしまう方も少なくありません。
しかし、声帯萎縮による音声障害には音声治療などによって改善が期待できる場合があります。 国内の加齢性声帯萎縮21例を対象とした研究では、VFEなどの音声治療後に音声評価、最長発声持続時間、VHI-10などの改善が報告されています。

「年齢のせい」と決めつけないことが大切です
声がかすれる原因は、声帯萎縮だけではありません。
例えば、
声帯ポリープ
声帯結節
声帯炎
声帯麻痺
声帯溝症
喉頭がんなどの腫瘍性病変
でも、声がかすれることがあります。
特に、
声のかすれが長く続く
徐々に悪化している
血痰が出る
飲み込みにくい
のどに強い違和感がある
首にしこりがある
といった場合には、声帯を一度確認することが大切です。
喫煙歴のある方で嗄声が続く場合も、「年齢による声の変化」と自己判断せず、耳鼻咽喉科を受診してください。
耳鼻咽喉科では声帯を内視鏡で確認します
声帯は口を開けただけでは十分に観察できません。
耳鼻咽喉科では、必要に応じて鼻から細い内視鏡を入れて、喉頭・声帯を観察します。
確認するのは、
声帯がやせていないか
左右の声帯がきちんと動いているか
発声したときに隙間が残っていないか
ポリープや腫瘍など別の病変がないか
といった点です。
「声がかすれる=声帯萎縮」と決めつけるのではなく、まず声帯そのものを確認して原因を調べることが重要です。

声帯萎縮症は治療できるの?
加齢そのものを元に戻すことはできませんが、声帯萎縮による声の出しにくさに対して治療を行い、声の改善を目指すことは可能です。
治療方法は、声帯萎縮の程度や声の困り方などによって異なります。
① 音声治療
声帯萎縮に対する代表的な治療の一つが音声治療(声のリハビリテーション)です。
声の出し方や呼吸の使い方を整え、声帯を効率よく振動させることを目指します。
Vocal Function Exercise(VFE)などの方法があり、国内でも声帯萎縮に対する有効性が複数報告されています。

② 日常生活でできる声のケア
日常生活では、声帯に過度な負担をかけないことも大切です。
こまめに水分をとる
無理に大声を出し続けない
長時間の無理な発声を避ける
喫煙している場合は禁煙を検討する
など、声帯をいたわる生活を心がけましょう。
ただし、声をまったく使わない方がよいという意味ではありません。
声帯萎縮に対しては適切な発声訓練が治療として行われるため、自己流で極端に声を出さなくするのではなく、状態に応じた対応が大切です。
③ 症状が強い場合には専門的な治療を検討します
音声治療を行っても声の出しにくさが強く残る場合などには、専門医療機関でさらに治療を検討することがあります。
例えば、声帯に材料を注入してボリュームを補う声帯内注入術など、声門の隙間を小さくする治療があります。
2026年のシステマティックレビューでも、加齢性音声障害に対して音声治療と声帯のaugmentation(ボリュームを補う治療)の両方が用いられており、患者さんの状態に応じた治療選択が行われています。
当院で専門的な治療が必要と判断した場合には、音声治療や手術などに対応できる専門医療機関へご紹介します。
薬を飲めば治りますか?
声帯萎縮そのものは声帯のボリュームが減少して声門閉鎖不全を起こす病態であり、お薬を飲めば治るわけではありません。
声帯の周囲に炎症があったり、痰がからむ場合は、消炎剤や去痰剤を投与することがあります。
薬が必要かどうかは、炎症や痰、逆流など、ほかの症状・病態が併存しているかを診察して判断します。
声帯萎縮から喉頭がんになりますか?
声帯萎縮そのものが喉頭がんへ変化する病気というわけではありません。
ただし重要なのは、
「声帯萎縮」と「喉頭がん」は、どちらも声のかすれを起こすことがある
という点です。
そのため、声がかすれている患者さんを診察する際には、「年齢による声帯萎縮だろう」と最初から決めつけず、内視鏡で声帯を確認することが大切です。
特に、声のかすれが続く方や喫煙歴のある方は、一度耳鼻咽喉科で声帯を確認することをおすすめします。
声のかすれ・声の衰えが気になったら耳鼻咽喉科へ
声帯萎縮は、加齢に伴う声の変化の代表的な原因の一つです。
しかし、
「年だから声が出なくなるのは仕方がない」
と諦める必要はありません。
まず内視鏡で声帯を確認し、声帯萎縮なのか、それ以外の病気なのかを調べることが大切です。
声帯萎縮と診断された場合には、声の状態や生活上の困り方に応じて、音声治療などによる改善を目指します。
声がかすれる、声が弱くなった、長く話せなくなったと感じたら、一度ご相談ください。
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中下 陽介(なかしもようすけ)
院長・医学博士・耳鼻咽喉科専門医
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主な資格・認定
- 日本専門医機構認定耳鼻咽喉科専門医
- 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会認定補聴器相談医
- 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会認定騒音性難聴担当医
- 日本めまい平衡医学会認定めまい相談医
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- 嚥下トレーニング協会認定講師
- 日本レセプト学会認定レセプト管理士
- 博士(医学)広島大学
- 補聴器適合判定医師




