首の前が腫れて痛い・発熱が続く|亜急性甲状腺炎の症状・検査・治療
首の前が腫れて痛い・発熱が続く|亜急性甲状腺炎の症状・検査・治療
「首の前側が痛い」
「のどぼとけの下あたりを触ると痛い」
「風邪が治ったのに発熱やだるさが続いている」
「首の痛みが耳やあごまで響く」
このような症状の原因の一つに、亜急性甲状腺炎(あきゅうせいこうじょうせんえん)があります。
亜急性甲状腺炎は、首の前側にある甲状腺に炎症が起こり、腫れや痛みを生じる病気です。
炎症によって甲状腺の組織が壊れると、甲状腺内に蓄えられていたホルモンが血液中へ流れ出すため、一時的に甲状腺ホルモンが高い状態になることがあります。日本甲状腺学会では「有痛性の破壊性甲状腺炎による甲状腺中毒症」と定義されています。

甲状腺はどこにあるの?
甲状腺は、のどぼとけの少し下、首の前側にある臓器です。
蝶が羽を広げたような形をしていて、気管の前側を包むように位置しています。
甲状腺では、身体の代謝などに関係する甲状腺ホルモンが作られています。
普段は外からほとんど意識することのない臓器ですが、亜急性甲状腺炎になると、甲状腺の一部が腫れて、押すと強い痛みを感じることがあります。
亜急性甲状腺炎とは?
亜急性甲状腺炎は、甲状腺に炎症が起こる病気です。
風邪のような上気道感染症状のあとに発症することがあり、ウイルス感染との関連が示唆されています。ただし、「特定のウイルスが甲状腺へ感染することが原因」と確定しているわけではありません。日本甲状腺学会も「ウイルス感染との関連が示唆されている」としています。
特徴的なのが、甲状腺の痛みです。
痛みのある部分を触ると腫れや硬さを感じることがあり、痛みが、
右側 → 左側
左側 → 右側
のように反対側へ移動することがあります。
これをクリーピング現象と呼びます。
こんな症状がみられます
① 首の前側の痛み・腫れ
最も特徴的な症状です。
のどぼとけの少し下あたりが痛み、押すと痛みが強くなることがあります。
首だけでなく、耳・あご・のどの方向へ痛みが響くこともあります。
② 発熱・だるさ
炎症によって、
- 発熱
- 全身のだるさ
- 疲れやすさ
などがみられることがあります。
高熱になることもあります。
③ 動悸・汗が多い
炎症によって甲状腺組織が壊れると、蓄えられていた甲状腺ホルモンが血液中へ流れ出します。
そのため一時的に、
- 動悸
- 汗が多い
- 暑がり
- 手のふるえ
- だるさ
など、甲状腺ホルモンが多いときにみられる症状が現れることがあります。

バセドウ病とは仕組みが違います
亜急性甲状腺炎では甲状腺ホルモンが高くなるため、
「甲状腺機能亢進症ですか?」
「バセドウ病ですか?」
と心配されることがあります。
しかし、両者は仕組みが異なります。
バセドウ病では、甲状腺が活発に働き、甲状腺ホルモンを過剰に作ります。
一方、亜急性甲状腺炎では、炎症によって甲状腺組織が壊れ、もともと甲状腺内に蓄えられていたホルモンが血液中へ漏れ出します。
つまり、
「作りすぎ」ではなく「壊れて漏れ出す」
という違いがあります。
このため、亜急性甲状腺炎による甲状腺中毒症に対しては、通常のバセドウ病で使用する抗甲状腺薬は基本的に使用しません。
どのように診断するの?
診断では、
首の痛みや腫れ
血液検査
甲状腺超音波検査(エコー)
などを組み合わせて判断します。
日本甲状腺学会の2024年診断ガイドラインでは、主な所見として、
- 痛みを伴う甲状腺の腫れ
- 赤沈またはCRP高値
- FT4(遊離T4)高値
- TSH低値
- 超音波検査で痛みのある場所に一致する低エコー域
が示されています。
血液検査では何を見るの?
血液検査では主に、
CRPなどの炎症反応
TSH
FT4などの甲状腺ホルモン
を確認します。
必要に応じて甲状腺に関連する抗体なども調べ、ほかの甲状腺疾患との鑑別に役立てます。
超音波検査(エコー)で甲状腺を確認します
超音波検査では、首の表面から甲状腺の状態を確認します。
亜急性甲状腺炎では、痛みのある場所に一致して低エコー域がみられることが診断上重要です。
また、首の痛みや甲状腺の腫れを起こす病気は亜急性甲状腺炎だけではありません。
日本甲状腺学会では、
橋本病の急性増悪
甲状腺嚢胞への出血
急性化膿性甲状腺炎
甲状腺未分化癌
などを除外する必要があるとしています。
そのため、「首が痛い=亜急性甲状腺炎」と自己判断しないことが大切です。

亜急性甲状腺炎の治療
亜急性甲状腺炎は、時間とともに炎症がおさまっていくことが多い病気です。
しかし、首の痛みや発熱が強い場合には、症状を軽減するための治療を行います。
痛み・炎症を抑える治療
症状に応じて、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)などの抗炎症薬を使用します。
痛みや発熱が強い場合などには、副腎皮質ステロイドによる治療を行うことがあります。
ステロイド治療では症状が比較的速やかに改善することがありますが、症状がよくなったからといって自己判断で急に薬を中止したり、早く減量したりすると、症状が再び現れることがあります。
医師の指示に従って徐々に減量することが大切です。
動悸などが強い場合
甲状腺ホルモンが一時的に高くなり、動悸などが強い場合には、症状に応じてβ遮断薬(βブロッカー)などを使用することがあります。
「痛みが治ったら終わり」ではありません
亜急性甲状腺炎では、症状が時間とともに変化します。
大まかには、
① 炎症が起こる
↓
② 甲状腺ホルモンが血液中へ漏れ出す
↓
③ 一時的に甲状腺ホルモンが高くなる
↓
④ その後、一時的に甲状腺機能が低下することがある
↓
⑤ 多くは正常な状態へ戻る
という経過をたどります。
日本甲状腺学会も、回復期には甲状腺機能低下症となる例が多く、少数では永続的な機能低下になることがあるとしています。
そのため、首の痛みや発熱がなくなっても、必要に応じて甲状腺機能を血液検査で確認することが大切です。

日常生活で気をつけること
発熱や首の痛み、動悸、強い倦怠感がある時期には、無理をせず身体を休めましょう。
特別な食事制限が必要になるとは限りません。
また、治療中に症状が改善しても、ステロイドなどの薬を自己判断で減量・中止しないことが重要です。日本内分泌学会も、自己判断での減量によって再燃する可能性があるため、担当医の指示に従うよう注意喚起しています。
首の痛み・腫れが続く場合はご相談ください
亜急性甲状腺炎では、風邪のあとなどに、
首の前側が痛い
甲状腺を触ると痛い
発熱が続く
動悸や汗が増えた
首から耳・あごにかけて痛い
などの症状が現れることがあります。
一方で、首の痛みや甲状腺の腫れには、亜急性甲状腺炎以外の病気が隠れている場合もあります。
症状だけで自己判断せず、診察・血液検査・超音波検査などを組み合わせて原因を確認することが大切です。
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中下 陽介(なかしもようすけ)
院長・医学博士・耳鼻咽喉科専門医
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- 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会認定騒音性難聴担当医
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- 日本医師会認定健康スポーツ医
- 嚥下トレーニング協会認定講師
- 日本レセプト学会認定レセプト管理士
- 博士(医学)広島大学
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