子どものヘルペス性歯肉口内炎|高熱・歯ぐきの腫れ・口内炎に注意
子どものヘルペス性歯肉口内炎|高熱・歯ぐきの腫れ・口内炎に注意
「高い熱が出て、口の中に口内炎がたくさんできた」
「歯ぐきが赤く腫れている」
「口が痛くて食べられない」
「よだれが増えて、水分もあまり飲んでくれない」
このような症状がある場合、ヘルペス性歯肉口内炎(ヘルペス口内炎)の可能性があります。
単純ヘルペスウイルス(HSV)に初めて感染したときに起こることがあり、特に小さなお子さんにみられる病気です。日本小児科学会では、歯肉口内炎の好発年齢を主に6か月~3歳としています。
特徴は、単に「口内炎が1個できる」のではなく、
発熱
+
歯ぐきが赤く腫れる
+
口の中に痛い病変がたくさんできる
ことです。日本口腔外科学会も、発熱・倦怠感に加えて、多数の口内炎や口腔粘膜の発赤、特に歯肉の発赤・腫脹・びらんが特徴としています。

ヘルペス性歯肉口内炎とは?
ヘルペス性歯肉口内炎は、主に単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)の初感染によって起こります。
初めてHSVに感染しても症状が出ないことがありますが、一部のお子さんでは発熱や強い口腔内症状を伴う歯肉口内炎として発症します。
口の中では、
- 歯ぐき
- 舌
- 唇の内側
- 頬の内側
- 口蓋
など、複数の場所に病変が現れることがあります。
特に重要なのが、歯ぐき全体が赤く腫れることです。
「普通の口内炎だと思っていたけれど、歯ぐきまで真っ赤になってきた」という場合は、ヘルペス性歯肉口内炎を考えるポイントになります。
こんな症状がみられます
① 発熱
発熱やだるさなどの全身症状がみられます。
② 口の中にたくさんの痛い病変
口の中に小さな水疱やびらん・潰瘍が多数でき、強く痛むことがあります。
そのため、
食べる
飲む
飲み込む
話す
といった動作を嫌がることがあります。
③ 歯ぐきが赤く腫れる
普通のアフタ性口内炎との違いを考えるうえで重要な症状です。
歯ぐきが全体的に赤くなり、腫れたり、触れると出血しやすくなったりすることがあります。
④ よだれが増える
口の中が痛いため、唾液を飲み込むことを嫌がり、よだれが増えることがあります。
⑤ 食べない・飲まない
最も注意したい症状です。
口の中の痛みが強いと、食事だけでなく水分まで嫌がることがあります。小児のヘルペス性歯肉口内炎で入院が必要になる代表的な理由も脱水です。

一番注意したいのは「脱水」です
保護者の方に最も注意していただきたいのは、食事量より水分量です。
数日あまり食べられなくても、水分がある程度とれていれば経過をみられることがあります。
一方、
水分をほとんど飲めない
飲んでもすぐ吐いてしまう
おしっこの回数・量が明らかに少ない
口の中や唇が乾いている
泣いても涙が少ない
ぐったりしている
といった場合は脱水が疑われます。
十分な水分をとれない場合には、点滴などが必要になることもあります。
「食べさせる」より、まず「飲ませる」
口内炎が痛いときに無理に通常の食事を食べさせる必要はありません。
まずは、水分を少量ずつ、こまめにとらせることを優先します。
一度にたくさん飲ませるのではなく、
ひと口ずつ
少量ずつ
回数を増やして
与えるのがポイントです。
痛みが強い場合には、冷たい飲み物や刺激の少ないものの方がとりやすいことがあります。
反対に、酸味・塩味・香辛料など刺激の強いものは痛みを強く感じることがあります。

治療について
治療では、水分を確保することと、痛みを軽くすることが非常に重要です。多くは自然に改善していく病気で、支持療法が治療の基本になります。
解熱鎮痛薬
発熱や口の痛みが強い場合には、症状に応じて解熱鎮痛薬を使用します。
痛みが軽くなることで、水分をとりやすくなることもあります。
抗ウイルス薬
症状、発症からの期間、重症度などを確認し、医師が必要と判断した場合には抗ウイルス薬を使用します。
小児では、発症早期で痛みや脱水が強い場合などにアシクロビル治療を検討する考え方があります。一方、すべての免疫正常児に一律に抗ウイルス薬が必要というわけではありません。
したがって、
「症状や発症からの期間などを確認し、必要に応じて抗ウイルス薬を使用します」
家庭で気をつけること
ヘルペスウイルスは、病変や唾液などとの接触によって感染する可能性があります。
家庭では、
コップ・食器・タオルなどの共用を避ける
口の周りや病変を触った後は手を洗う
きょうだい同士で飲み物を回し飲みしない
などを心がけましょう。
また、小さなお子さんが口の病変を触った手で目をこすらないよう注意します。HSVでは眼の感染(角膜炎)などを起こすこともあります。
こんなときは早めに受診してください
特に、
水分がほとんどとれない
おしっこが明らかに減っている
ぐったりしている
高熱や全身状態の悪化が続く
強い痛みで水分を受け付けない
目の充血・痛みなどがある
けいれん・意識がおかしい
といった場合は、早めの医療機関受診が必要です。
重度の脱水や重い合併症が疑われる場合には、入院治療が可能な医療機関での評価が必要になることがあります。
登園・登校はいつから?
日本小児科学会は、歯肉口内炎で発熱や口腔内アフタによる痛みが強く、経口での飲食が困難な場合は欠席して治療するとしています。また、口唇ヘルペスだけで全身状態が良好なら、マスクなどの対策をして登園・登校可能としています。
したがって、
「発熱がなく、口の痛みが改善し、水分や食事がとれて、全身状態がよくなってから登園・登校を考えましょう」
園・学校独自の基準がある場合には、その指示も確認してください。
「口内炎がたくさん+歯ぐきが赤い」は一度ご相談ください
子どもの口内炎には、
ヘルペス性歯肉口内炎
手足口病
ヘルパンギーナ
アフタ性口内炎
など、さまざまな原因があります。
例えばヘルパンギーナは口の後方~咽頭に病変が出やすいのに対し、ヘルペス性歯肉口内炎では歯肉を含む口腔内に広く病変がみられることが鑑別の参考になります。
特に、
「発熱+口内炎がたくさん+歯ぐきが赤く腫れている」
という場合には、ヘルペス性歯肉口内炎の可能性があります。
そして小さなお子さんでは、病名そのもの以上に「水分がとれているか」を確認することが重要です。
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中下 陽介(なかしもようすけ)
院長・医学博士・耳鼻咽喉科専門医
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- 日本レセプト学会認定レセプト管理士
- 博士(医学)広島大学
- 補聴器適合判定医師




