Vocal Function Exercise(VFE)とは?|声帯萎縮のための音声治療
Vocal Function Exercises(VFE)とは?声帯萎縮などに行う「声のリハビリ」
「以前より声が弱くなった」
「声がかすれる」
「長く話していると声が疲れる」
「以前のように声が出しにくい」
このような声の変化は、加齢などによって声帯がやせる声帯萎縮が原因となっていることがあります。
声帯萎縮に対する治療の一つが、Vocal Function Exercises(VFE:Vocal Function Exercise)です。
VFEは、ただ大きな声を出して「声帯を鍛える」トレーニングではありません。
呼吸・声帯の振動・声の響きをバランスよく使い、力まず効率よく声を出せる状態を目指す音声治療です。VFEは、ウォームアップ、ストレッチ、収縮、パワーエクササイズという4つの基本課題から構成される体系的な方法です。

VFEは何のために行うの?
声を出すためには、肺から送り出された空気によって左右の声帯が適切に振動する必要があります。
ところが声帯が萎縮すると、声帯が薄くなり、声を出そうとして左右の声帯が近づいても、中央にすき間が残ることがあります。
すると、すき間から息が漏れて、
- 声がかすれる
- 声が弱くなる
- 大きな声を出しにくい
- 長く声を出し続けにくい
- 話していると疲れる
といった症状につながります。
VFEでは、萎縮した声帯を単純に「太くする」「若返らせる」ことを目的にするのではありません。
残っている発声機能を上手に使い、呼吸・発声・共鳴のバランスを整えることで、より楽で効率的な発声を目指します。

VFEの具体的な方法
VFEの原法は4種類の基本エクササイズから構成されています。今回ご紹介する方法では、それを患者さんが順番に実践しやすいように、最後の確認の持続発声を含めた5ステップで説明します。
大切なのは、
「大きな声を出す」ことではなく、「力まず、楽に、効率よく発声する」こと
です。
① 「イー」と声を伸ばす|持続発声
まず、自分が出しやすい高さで、
「イーーーー」
と声を伸ばします。
声を張り上げるのではなく、やさしく安定した声を響かせることを意識します。
息を一気に吐き出さず、呼吸をコントロールしながら声を安定させることがポイントです。
練習の目安:1回10秒以上 × 2回
ただし、10秒は目安です。苦しいのに無理に声を伸ばす必要はありません。
原法では持続発声はできるだけ柔らかく安定した声で行い、持続時間については肺活量などから個別に目標を設定する考え方もあります。
② 低い声から高い声へ|ピッチグライド
次に、
低い声 ↗ 高い声
へ、なめらかに声を上げていきます。
「ノー」「ウー」などの音を使って行ってみましょう。
階段のように一音ずつ上げるのではなく、低いところから高いところまで声を滑らせるように変化させるイメージです。
練習の目安:約5秒 × 2回
急激に声を高くしたり、首に力を入れたりしないことが大切です。
③ 高い声から低い声へ|ピッチグライド
今度は②とは反対に、
高い声 ↘ 低い声
へ、なめらかに声を下げていきます。
こちらも「ノー」「ウー」などを使い、急に音程を落とさず、できる範囲で滑らかに変化させます。
練習の目安:約5秒 × 2回
②と③のピッチグライドは、VFE原法でもそれぞれ声の高さを上昇・下降させる基本課題です。
④ 「オー」で5つの高さを発声|5音階発声
次は、ド・レ・ミ・ファ・ソなど、異なる5つの高さで発声します。
イメージとしては、
ド → レ → ミ → ファ → ソ
それぞれの高さで「オー」と、やさしく響かせます。
「オー オー オー オー オー」
と5音分発声してみましょう。
ポイントは、息を止めたり大声を出したりせず、無理のない範囲で声を響かせることです。
VFE原法でも、5つの異なる音高で持続発声する「パワーエクササイズ」が基本課題に含まれています。
⑤ 最後にもう一度「イー」|持続発声
最後に、もう一度、自分が出しやすい高さで、
「イーーーー」
と持続発声します。
最初と同じように、声を張らず、呼吸をコントロールしながら安定した発声を意識します。
練習の目安:1回10秒以上 × 2回
ここでも「10秒を絶対に超えなければならない」という意味ではありません。
苦しくなるまで続けるのではなく、無理なく安定した発声ができていることを優先します。

VFEで最も大切なのは「力まない」こと
VFEは筋力トレーニングのように、
「頑張って大きな声を出せば出すほどよい」
という練習ではありません。
原法でも、VFEは柔らかく、しっかりと響く声を用い、緊張を抑えた半閉鎖声道(SOVT)を利用することが重視されています。
次のような練習は避けましょう。
× 大声を出そうとして首や肩に力を入れる
× 無理に高い声を出す
× 苦しいのに声を長く伸ばす
× のどが痛いのに練習を続ける
× 回数を自己判断でどんどん増やす
重要なのは、
「楽な姿勢」
「適切な呼吸」
「力まない発声」
「自分の声に合った高さ」
です。

地声と裏声はどうすればいい?
VFEの基本は地声(モーダルボイス)で行い、裏声だけでトレーニングを済ませないことが注意点です。
一方、低い音から高い音、高い音から低い音へ動かすピッチグライドでは、患者さんの声域や状態によって裏声を利用する場合もあります。
大切なのは、
「裏声がよい」「地声がよい」と自己判断するのではなく、声の状態に合わせて発声方法を調整すること
です。
1日何回くらい練習するの?
一般的な目安として、
1日2回(朝・晩など)
1回 約5~10分
行ってみましょう。
研究では6週間程度の練習期間を設定したものもありますが、最適な練習量がすべての患者さんで同じとは限りません。
練習量と効果の関係については、なお検討が続けられています。
そのため、
練習時間・回数・音の高さ・継続期間は、声の状態に合わせて調整することが大切です。
自分で動画を見ながら練習してもいい?
VFEは一見すると、「イー」「オー」と声を出すだけの簡単な練習に見えるかもしれません。
しかし、自己流で行うと、
声を張り上げる
首や肩に力が入る
息を必要以上に強く吐く
無理な高さまで声を出す
など、本来のVFEとは異なる発声になってしまうことがあります。
まずは耳鼻咽喉科で、声帯の形や動き、発声時の閉じ方などを確認することが大切です。
声帯萎縮なのか、声帯ポリープや声帯麻痺など別の病気なのかによって、適切な治療は異なります。

VFEをすれば声帯萎縮は治るの?
VFEは、萎縮した声帯そのものを若返らせる治療ではありません。
また、
「VFEをすれば必ず元の声に戻る」
という治療でもありません。
VFEによって呼吸・発声・声の響きのバランスを整え、残っている発声機能を効率よく使うことで、声の出しやすさや声の質などの改善を目指します。
声帯萎縮の程度が強い場合や、発声時の声門間隙が大きい場合などでは、音声治療だけで十分な改善が得られないこともあります。
その場合には、声の状態や生活上の困りごとを考慮し、専門医療機関で声帯注入術など別の治療が検討されることがあります。
声がかすれるときは、まず耳鼻咽喉科へ
「年齢だから声が出にくくなった」と思っていても、声のかすれの原因が声帯萎縮とは限りません。
声帯ポリープ、声帯結節、声帯麻痺、声帯溝症、喉頭炎、腫瘍性病変などでも声は変化します。
そのため、声がかすれる、声が弱くなる、長く話せないといった症状が続く場合には、まず耳鼻咽喉科で声帯を確認することが大切です。
声帯の状態を確認したうえで、一人ひとりに合った「声のリハビリ」を考えていきます。
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中下 陽介(なかしもようすけ)
院長・医学博士・耳鼻咽喉科専門医
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- 日本レセプト学会認定レセプト管理士
- 博士(医学)広島大学
- 補聴器適合判定医師




